明日から短期とはいえ出張があるので今日中に終わらせると決めていた。昨日書取を終えた時点でまだ分量にして20分も残っていて厳しいかなとは思ったが。
今日は出張前の残務処理のために午前中は休出、午後から本町方面のベローチェで3時間書取を続けた(店の方すいません)。
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おかげで何とか封じ込め。あまり疲れは感じなかった。これが最後だと思うと、もう何時間でも続けられるような気がした。
話は、ルポルタージュ風味で、何十年も捨てられていた幽霊屋敷に関する顛末を書いたもの。スクリプトは(→)、音声は(→)
これでゾラの短編集計7篇(「ある農夫の死」だけはソースなく断念)終了。2ヶ月ほど書き取ってきたけど、それぞれ興味深く書取進めた。
自然主義ならではの精緻な描写はそのままだけど、全体的にタッチ軽くオチの付け方含めてモーパッサンを彷彿とさせる話も。
語学的には長編と比べると登場人物があまり増えない分、話が膨らまず、前提と成行きを理解しやすいので難易度は若干下がると思う。
ゾラを読んでみたいが長編だと敷居が高いと思う方は、こういう短編集から取り掛かるのもいいと思う。
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これで中断を挟んで4年以上続けてきた書取習慣も封じ込め。小説を書き取るという行為が習慣になって久しかったので寂しい。未練はある。ゾラの居酒屋とか、ナナとか、もっと書取したかった。他にもモーパッサン、ジッドも。さらに未踏のユーゴ、プルースト、スタンダールも・・挙げたらキリがない。
でもキリがないからこそどこかで軌道修正しないと。本来の目的に立ち返り、実用的に鍛錬する方向に戻そうと決めた。自分が安定的に勉強に割り当てられる時間は朝の1時間しかないので、新しい勉強法を考えるなら今までの習慣を捨てないと無理だ。
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小説の書取なんて、本当に自己満足の最たるものだった。とにかく時間かかるし、ストレスたまるし、実用的な方向にフランス語を鍛えたい人には絶対に勧められない。
でも書取の完遂を経て得られた小説の世界に対する思い入れというか、没入感というか、感慨の塊のようなものは何にも代えがたいものになった。
ボヴァリー夫人のエマが迷い込んだ夢想の森とか、女の一生でジャンヌが眺め続けたエトルタの岬とか、ジェルミナルで幾多の労働者を飲み込んだ暗くゴツゴツしたモンスーの炭鉱とか、そういった特徴的な情景は自分の記憶の襞に深くこびり付いていて、書き取っていた時の自分の感情の揺らぎも含めて、まるで身近にいたように、今でも強く深く濃く思い出すことができる。
書取を通じて、雲の彼方にあったフランス文学の世界を間近に感じることができた。それだけで本当に楽しかった。
いずれ書取で培った経験と感動をまとめて、心がトキめく書取の魔法とか、みるみる痩せるディクテダイエットとか、キャッチーな布教本を書いて大儲けしよう(誰が買うんだ)。
出張から戻ったら新展開へ。