1ヶ月で何とか踏破しました。
イタリア系ユダヤ人である著者が、ナチスによって逮捕され、アウシュヴィッツに連行され、選別(虐殺)、飢餓、病気の中を生き延びて、最後、ソ連侵攻により解放されるまでの体験を記したものです。
とにかく、ユダヤ人囚人に向けられる悪意が終始一貫して凄まじすぎて、感想を形容する言葉が見つかりません。
辛いとか、重いとか、しんどいとか、どんよりするとか、可哀そうとか、悲しいとか、そういう言葉では軽いのです。
この本は世界各国で翻訳されて、イタリアのアンチファシズム文学の古典の1つになっているそうですが、間違いなく読み継がれるべき話ですね。
我々には、後世に語り継ぐ責任があるんだろうと思います。
文章自体は、同時期のファシズム下の素材を扱った文学者のパヴェーゼ、カルロ・レーヴィよりも読みやすく感じました。
突飛な比喩は少ないですし、関係副詞や関係代名詞を多用せず、:や;を使って文章をシンプルにまとめてくれています。
感情を殺して生き延びるしかなかった著者による、乾いた情景描写がアウシュヴィッツの寒々とした感じとマッチして何とも言えない雰囲気を醸し出しています。
あと蛇足。
作中、セリフも多いのですが、SS(親衛隊)などのドイツ人による命令や罵声のドイツ語と、フランス系ユダヤ人の囚人の話すフランス語が、原語のまま、イタリア語に混じってポロポロ出てきます。
著者が敢えてイタリア語に訳さない場面も多く、ニュアンスで察しろみたいな感じなのですが、さすがにドイツ語は無理でしたね。
日本語本の丁寧な解説なしで進むのは難しかったです。