とにかくフランス語を勉強する

フランス語に加えてイタリア語もダラダラ勉強しているダメリーマンの記録

キリストはエボリで止まった(Cristo si è fermato a Eboli)を踏破する

イタリア文学シリーズです。こちらも踏破しました。

結局、ほぼ原書全文を書写しながらじっくり解読する作業をしたので、1月24日に取り組み始めてから50日かかりました。

毎日面白く読みました。これは傑作ですね。没入しながら読み進めることが出来ました。

 

著者はカルロ・レーヴィ。画家であり、医者であり、著述家であり、のちには上院議員まで勤め上げたという、非常に恵まれたバックグラウンドを持つ人物です。

内容は、著者が反ファシズム活動のかどで捕えられ、南イタリアガリアーノ(実際はアリアーノ)という山奥の寒村に流刑に処された際の、村人との交流記録をまとめたものです。

 

話の中で時は淡々と流れていき、レーヴィは村民との交流を重ねていくのですが、彼自身の心情表現は殆どなく、自身のフィルターを薄くした描写が特徴的です。

当時のファシズム政権によるエチオピア侵攻に対して、当時の村の人々はどう感じ、どう振る舞っていたのかみたいな描写が生々しく、興味深く読みました。

 

題名は独特ですが、これはローマ・キリスト教的価値観が南イタリアには伝播せず、同地に救いようのない貧困を帯びた別の文化・風土が存在していること示すための比喩表現です。エボリに何かがあるわけではありません。

 

文体は同じ流刑囚だったパヴェーゼの小説に比べるとシンプルで、構成も分かりやすく、まだ取り組みやすいです。

ただし、重みのある風景描写や、止めどなく溢れ出てくる登場人物の圧迫に最初は気圧されるかもしれません。

加えて、段落による改行が殆どない構成なので文字圧が強いです。慣れるまでは流れてくる情報量の多さに苦労しました。

でもじっくり精読して、読み終わって進歩を実感しています。読解においては相応に自信を持てるレベルになってきたんじゃないかと思います。

 

ちなみに日本語本は、訳出が難解な部分、固有名詞、ラテン語表現などを理解するために使いました。

当時の時代背景の理解も必要ですし、原書だけで完全に読み解くのは難しかったと思います。