フランス文学の話。
面白い論説を見つけたので紹介します。執筆者はモーパッサン愛好会の方です。
モーパッサンの語彙に関する量的研究
Une étude quantitative du vocabulaire de Maupassant
内容は「モーパッサンの文章は本当にシンプルで明瞭なのか?」という問いについて、フローベール、ゾラ、プルーストという似た時代の作家(巨匠)との比較で、計量的に比較して検討したもの。
それぞれ幾つかの代表作を標本として、コーパスという計量分析ツールで品詞ごとの語彙使用数を抜き出したようです。
そのまま内容を書くと盗作になってしまうのでエッセンスだけ。
・フローベールは名詞で、プルーストは形容詞・副詞で、他の3人より突出した数の語彙を用いている。同じ語彙の繰り返しを避ける傾向が非常に強い。
・ゾラは、4人の中で最も使用語彙が少ないが、マニアックな単語の使いまわしが多い(居酒屋、ナナ、ジェルミナルなど、自然主義文学の描写で場面が偏っていることに因るのかも)
・モーパッサンは、その使用語彙数において、他の3人の作家との間に明らかな差はない。動詞、名詞、副詞、形容詞合わせて18000語以上(!)使っている。
⇒珍しい単語の利用頻度は他の作家より少ないという部分はあるが、使用語彙が豊富なのに、文章をシンプルで怜悧に見せているという点でモーパッサンの技術は卓越している。