「流刑(Il carcere)」を踏破しました。1カ月弱、毎日よく続けたと思います。
(以下ネタバレを含む)
ファシズムのムッソリーニ政権下で実際に流刑を経験した著者の自伝的小説です。
主人公がイタリアの南端に流されてから、地域の人たちとの様々な形での付き合いを経て、恩赦が出て帰るまでを描いています。
重苦しい小説でした。正直、話としては濃厚な序破急や起承転結があるわけでもはありません。フラグもきれいに回収されるわけでないし、何かが報われるわけでもありません。
最初は「気だるい私小説だなー、失敗したなー」とか思いながらダラダラ進んでましたが、徐々に著者の中2病的な孤独への拘りと、南イタリアの過疎の田舎の寂寥観が馴染んできて、そこからは楽しめました。
読み終わった後に心が何かザワつくのは、この小説の主題である「壁」「孤独」に自分のぼっち気質みたいなものが共振しているからなのかもなぁとも思います。
語学的部分について。自然主義文学のような細かい情景描写の多さと、本人の精神世界の描写の難解さもあって、精読にはかなりの根気を要しました。
同一作者でも「美しい夏(La Bella Estate)」(⇒)の方が簡単に感じます。というか「美しい夏」と同じ著者とは思えないほど、全く文体が違うのに驚きました。
相手の敬称として、LeiではなくVoiを使うのはムッソリーニ時代の用法だったらしいですが少し違和感ありますね。Vousを使うフランス語みたい。
次は何読もうかな。